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Thomas,Wohin Farhen Sie,denn?気力・体力は減少気味,睡眠時間は長くしないと持たないです。人生は「誤解と錯覚」ですがやりたいことはやっておかないと!


by gentas
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君たちに明日はない

君たちに明日はない (新潮文庫)

垣根 涼介 / 新潮社



なんというショッキングな表題でしょう。しかし、読み終わったあとは著者の着眼点の素晴らしさと表現力、構成力に感動しました。意外にも表題のような厳しい内容はあまり感じませんでした。むしろ緻密な計算に基づいた好著であることを確認しただけです。

実際にリストラに直面していたらとても読みたくないでしょうが、山本周五郎賞などを受賞したように文学作品として、時代をつかんでいる(Zeitgeit)だなあ、と思いました。

いきおいで同氏の作品を何冊か読みました。いつもほれると一挙に読みたくなるのです。
特に、印象的なのは

ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)

垣根 涼介 / 幻冬舎



これはすごいです。
南米移民という史実や外務省(あるいは公務員)のすさまじいまでの「無謬性」のなせる残酷さ冷酷さだけが浮き彫りにされています。

あまりにテーマが大きいので多少粗く見えるプロットもありますが、それは敢えていえば、レベル感の問題で大きな影響ないことです。例えば、大きな建築物の設計をして、パイプのレイアウトが気に入れない、程度のことです(雨漏りや建物が壊れるという問題とは違います)。南米移住で筆舌に尽くせない苦労をしたであろう先人のイメージはよく伝わります。

ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

垣根 涼介 / 幻冬舎



結末は圧巻です。最近、映画では妙に暗いエンディングばかり見てきたような気がしますが、実にリアルな
大人のハッピーエンド
に思えました。きっと作者が現地を入念に調べ上げた、正に文化の匂いすらしました。

これは映画になるのではないでしょうか?だとしたら、ぜひ見たいですね。とんでもない超大作の予感を感じます。

すぐに作者のファンになりました。
by gentas | 2010-03-20 00:12 | Book Worm